下に西洋医学での突発性難聴の症状、原因などを引用しています。ステロイド療法終了後に残存した症状は回復しにくいとされていますが、当院では根気よく鍼をしていきます。下半身の弱りで頭部・耳の周辺が過緊張になっている場合は太谿・照海穴などを用います。耳の周囲が循環障害をおこしている場合は、風池穴などを用います。内耳に炎症がある場合は関衝穴などを用います。
■突発性難聴:60代男性 二カ月前に右耳突発性難聴を発症。1週間ステロイド療法をするが変化なし。聴力は半分程度。耳がつまって外部の音が大きく響きとても気分が悪い。発症前に仕事のストレスなどがかなりあった。
身体を調べると、上半身の緊張がとても強い。特に右上背部、腹部右上などに反応があり、脈、舌の状態、その他症状より過緊張によるものと思われた。また年齢による下半身の弱りもあり、上下のバランスが悪くストレスをきっかけに発症したものである。はじめ上半身の緊張をとるために頭に鍼をしました。何回かの鍼の施術の後、下半身の弱りを取るために「腎」に関わるツボに鍼をしました。15回ほど施術を行いました。
■耳鳴りの症例:50代男性 1年半前に仕事のストレスをきっかけに右耳に高音の耳鳴りが始まる。寝ている間以外、ずっと鳴っている。難聴は無し。耳鼻科で数カ月服薬(西洋薬・漢方薬)するが変化なし。月に一度位静かになることがある。以来、変化なく現在に至っている。
身体をみると、上実下虚の体質で、上半身が緊張して下半身が弱っていました。また耳に経絡で繋がっている右指先端につよい反応がありました。鍼は右手指と足に鍼を10回ほどしました。
難聴がないので突発性難聴ではありませんが、長期にわたる耳鳴りを施術した症例です。
■突発性難聴:30代男性 仕事の試験のストレスのため、右耳の突発性難聴を発症。ステロイド療法を行い、聴力が回復するが耳の詰まった感じと耳鳴りが回復しないので来院される。身体をみると上実下虚で下半身が弱り相対的に上半身が緊張した状態であった。手足に1本ずつ上下のバランスをとるために鍼をする。週に2度、鍼を施術し10回ほど継続しました。
■突発性難聴:30代女性 左耳突発性難聴を発症して5日目、左聴力70~75デシベルで音がほとんど聞こえない。耳鳴りは少しだけ。ステロイド内服をあと2日で終了。症状の改善があまりないため当院に来院される。
左背部、左腹部がかなり緊張している。仕事のストレスの為、左上半身の緊張のために発症したと考え、左頭のツボと左指のツボに鍼をする。6回ほど施術されました。
※記載の症例は、当院の鍼灸を受療されて同じような経過をたどることを保証するものではありません。症状・病気の程度、生活習慣や体質の違いで効果は異なることがあります。施術を受けられる際の参考としてご覧ください。
メディカルノート 突発性難聴(メディカルノート)
■症状
健康で耳の病気を経験したことのない人が、突然に耳が聞こえなくなります。難聴が第一の症状であり、付随する形で耳鳴りやめまいを併発することがあります。
通常、左右いずれか片側のみです。再発はほとんどありません。発症から治療開始までの間に難聴の程度が変動することはありません。
難聴に加えて耳鳴りやめまいを伴うこともあります。内耳には聞こえを担当する蝸牛、身体の平衡感覚を感知する三半規管や前庭と呼ばれる構造物が存在しています。そして内耳から蝸牛神経、前庭神経がつながります。耳鳴りは聞こえに関係する神経系の異常興奮によって生じます。そのため、難聴とともに耳鳴りを自覚することがあります。
障害が強い場合、蝸牛・蝸牛神経だけではなく、三半規管・前庭・前庭神経にも影響が広がります。そして回転性または浮動性のめまいを生じます。つまり、めまいがある方が重症度は高いことになります。■原因
原因は明確になっていませんが、これまでの研究では内耳のウイルス感染、循環障害、日常生活上のストレスなどが関与していると考えられています。
◎ウイルス感染説
ムンプス(流行性耳下腺炎)で片側の高度難聴をきたすことが知られています。突発性難聴の約7%はムンプスの不顕性感染(病原菌に感染したが症状が現れていない状態)であるとする報告もあります。しかし、突発性難聴のほとんどのケースでは原因となるウイルスを特定するまでには至っていません。
◎内耳(蝸牛)循環障害説
耳の奥の聴力と平衡を司る内耳と呼ばれる器官にある血管がけいれんしたり塞がったりすることで症状が生じるのではないかという説です。しかし、この説では若年層にも発症したり、突発性難聴の多くが再発していないという事実をうまく説明することができません。
◎ストレスとの関係
肉体的・精神的ストレスも突発性難聴の引き金になると言われています。ストレスを感じると交感神経が活発化して血管が収縮します。血管が収縮すると内耳は血流不足になります。血流不足では酸素など必要な成分が十分に内耳に供給されません。そして内耳機能が悪影響を受けて突発性難聴が発症するという考えです。またストレスにより内耳障害を引き起こしうるウイルスが再活性する可能性も指摘されています。ストレスと一言に言っても残業、睡眠不足、人間関係など数多くの要素があります。またストレス度合いを数値によって明確にできないことも突発性難聴とストレスの関係を明確にできない理由の一つです。■治療
発症後1週間以内に治療を開始することが重要です。最もよく行われるのはステロイドホルモン剤の投与です。血管拡張剤を使う場合もあります 。これらで改善がみられない時は高圧酸素療法、ステロイドホルモン剤の鼓室内投与、星状神経節ブロックなどの追加治療が検討されることもあります。しかし、十分なエビデンスは確立されていません。
治療を行っても後遺症なく完治する方は1/3程度です。そして発症時よりは難聴が改善するが元には戻らない方が1/3程度、治療に反応しない方が1/3程度です。突発性難聴に関連した後遺症は非常に不快なものです。耳鳴りが残ると頭のなかで常に音が鳴るため生活の質にも影響します。