アトピー性皮膚炎の特徴と原因
アトピー性皮膚炎の鍼灸での考え方と鍼灸
アトピー性皮膚炎の鍼灸について
当院に来院されるアトピー性皮膚炎の方の内、比較的早期によくなる方もいますが、やや治りにくいアトピーの方もおられます。治りにくいアトピーは、ステロイド外用薬の長期使用、肥厚の程度がつよいもの、日常的にストレスにさらされている人、寒がりで足が冷える人、食生活や生活習慣が不規則な人に見られます。 そして、ストレスを溜めやすい性格も重要な治りにくい原因の一つです。鍼で皮膚と身体全体の炎症傾向や皮膚バリヤーの修復をはかり、ストレスにつよくなる方法も指導しながら、症状の寛解を目指していきます。またアトピー性皮膚炎は、季節の変わり目や生活環境の変化などで急に悪化したりと、かなりデリケートな病気ですので、丁寧な施術を心がけていきます。何でも相談していただき、信頼して鍼を受けていただければと思います。
アトピー性皮膚炎の症例
■アトピー性皮膚炎:40代女性 幼少期よりアトピーを発症、大学生になってストレスで再発、以降ストレスがかかると悪化し、ステロイド・プロトピックを使用するが軽快しなかった。次に漢方薬を飲みはじめて年単位でよくなっていた。今年になって仕事の疲れ、寝不足、食べ過ぎで顔・首・肩・手指までアトピー症状がでてきたので、橋本鍼灸院に来院された。
鍼灸に基づく原因と鍼:疲れやすい・脈が弱い・舌に力がない等の情報から体力低下によるものと判断し、体力が増すように鍼を3カ月ほど行いました。
この症例のように体力低下によるものは補法といってごく軽い刺激をもちいます。
■アトピー性皮膚炎:4歳男子 生後1年目からアトピー性皮膚炎発症。肘窩・膝窩・腹部・顔面・背部など全身に乾燥性の赤疹・紅斑が広がっている。ステロイ ド外用薬を使用するが徐々に悪化してくる。鍼を希望して橋本鍼灸院に来院、風熱タイプの実証として施術。週に二回、半年ほど通院されました。ステロイドは初回より母親の希望により使用していません。
■アトピー性皮膚炎:20代男性 小学生の頃よりアトピー性皮膚炎発症。IGA腎症も発病している。不規則な生活と陽熱の飲食により悪化している。赤疹はじくじくしており、湿熱タイプであるが、腎虚も顕著だった。補腎と湿熱をとる鍼により20回ほど施術をされました。
■アトピー性皮膚炎:30代女性 小学生の頃よりアトピー性皮膚炎発症。ストロイド外用薬を時々使用していた。結婚して出産してから症状が悪化。頭部・顔面・上肢・背部・腹部に赤疹と紅斑がつよい。湿熱タイプであるが、腎虚も顕著。はじめ瀉法で鍼をするが変化が少ないので、補腎に変更しました。1年ほど通院されました。
■アトピー性皮膚炎:30台女性 就職してから、ストレスと食事飲酒の不摂生でアトピーが発症。顔、首、前胸部、背部を中心に発赤、痒み。ひどいときは湿疹が破れてじくじくになる。ステロイドを嫌ってほとんど使用していない。原因は、飲食・飲酒による「熱邪」が盛んであるのと、ストレスによる「肝鬱気滞」から「風」を生じてアトピーを発症したものである。施術は一年程じっくりと行いました。
■アトピー性皮膚炎:20台女性 小学生の頃よりアトピーを発症。中学生には一旦よくなった。大学に入学してから首・顔・腕に再発。プロトピック塗布軽快していたが、次第に効果なくなる。漢方薬を飲み始めるが一進一退で治らず。半年前より疲労倦怠感・発熱とともに症状が悪化してくる。10月であるのに非常に寒がる。これは体力が低下したことにより、漢方薬の清熱薬が更に体力を損傷して悪化した例である。皮膚は熱くて痒いのに下半身を中心に悪寒があるのが特徴で、通常のアトピーの療法では治しがたい。体力を鍼で丁寧に増強して、アトピーの「熱邪」「風邪」を少しづつ体力を奪わないように鍼をする必要があります。半年ほどの鍼を継続されました。
※記載の症例は、当院の鍼灸を受療されて同じような経過をたどることを保証するものではありません。症状・病気の程度、生活習慣や体質の違いで効果は異なることがあります。施術を受けられる際の参考としてご覧ください。
アトピー性皮膚炎の特徴と原因
日本皮膚科学会では、アトピー性皮膚炎は「増悪・寛解を繰り返す、瘙痒(痒み)のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」(引用:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2009年)と定義されています。
アトピー素因とは
(1)本人または家族が、アレルギー性の病気を持っていること
(2)アレルギーと深い関係がある「IgE抗体」を作りやすい体質を持っていること
をいいます。アトピー性皮膚炎の原因には、アトピー素因やバリア機能が低下している皮膚状態などの「体質的な要因」と、アレルギー症状を起こす物質(アレルゲン)や皮膚への外部刺激など「環境的な要因」があります。
体質的な要因と環境的な要因が重なったときに、皮膚炎の症状があらわれると考えられています。・体質に関する要因 ~アトピー素因、皮膚のバリア機能低下
・環境に関する要因 ~アレルゲン(アレルギー症状の原因となる物質)、アレルゲン以外の刺激(汗、衣類による摩擦、乾燥、など)、その他(寝不足、過労、ストレス)
アトピー性皮膚炎の鍼灸での考え方
●体質判別が重要です
当院では、鍼灸に基づく身体の側の体質(上記のアトピー要因とバリア機能低下を含む)を重視して鍼灸をします。
アトピーの人の体質は
①肝鬱タイプ~ストレスが多く、身体が緊張して、炎症が起こりやすい。
②脾虚タイプ~胃腸の働きが低下、疲労しやすい。皮膚の修復力が弱い。
③腎虚タイプ~足腰が弱い、ステロイドを長期使用している。皮膚の炎症を治す力が弱い。
に分類しています。
アトピーの人は、左のイラストの感じというよりも表にストレスを出さないタイプが多いです。
●体質ごとの鍼灸は異なります
①のタイプは体力はあるので、身体の緊張をとり精神安定をはかる鍼をします。
②のタイプは、身体が疲れた状態ですので、刺激の少ない優しい鍼をして胃腸の状態を改善し、体力を増すようにします。
③のタイプは、上半身の緊張をとり、下半身の弱りを補うように鍼灸をします。このタイプでは、寒がりで手足が冷たい場合にお灸をすることもあります。
すべて1~2本程度の少数鍼で鍼をします。
以上の体質を改善することで、徐々にアレルゲンに反応しにくくなり、多くは症状が軽快していきます。
したがって鍼灸では、各人の体質を明確に判別することが重要になります。
特に①と②のタイプは体力が大きく異なりますので、判別が大事です。
参照:「少数穴による治験例集(北辰会方式)(第3回)清熱解毒法によるアトピー性皮膚炎の即効治験例」
●アトピー性皮膚炎の養生法
保湿、アレルゲンの除去、清潔な居住環境は実行した上で、鍼灸では食事内容をとても重要視します。
飲食物には、漢方薬と同じく、それぞれ、温める、冷やす、補う、余分なものを排出する、などの作用があります。
アトピーでは、温めすぎるものは炎症を助長するので、控える必要があります。例えば唐辛子、ニンニクなどです。
逆に炎症を鎮める食材もあります。
鍼の施術と同時に、各人の体質にあった食材、調理方法などをお教えします。
合わないものを食べていると治りが悪くなり、体質改善にあった食事であると回復を早めてくれます。
炎症傾向の人は控えたほうがいいでしょう
キャベツは炎症をとる働きがあります
■②番脾虚タイプの症例
症状:40代女性。幼少期よりアトピーを発症、大学生になってストレスで再発、以降ストレスがかかると悪化し、ステロイド・プロトピックを使用するが軽快しなかった。次に漢方薬を飲みはじめて年単位でよくなっていた。今年になって仕事の疲れ、寝不足、食べ過ぎで顔・首・肩・手指までアトピー症状がでてきて橋本鍼灸院に来院される。
鍼灸による原因と鍼:疲れやすい・脈が弱い・舌に力がない、ツボの反応等の情報から体力低下によるものと判断し、体力・胃腸が強くなるように鍼を行う。食事は、胃腸の弱りがあるので消化の良いものを食べるようにする。
経過:週2回の通院を継続し軽快してから、週1回にして3ヶ月程でアトピー症状はほぼ改善しました。
この症例のように体力低下によるものは補法といってごく軽い刺激による鍼が効果的です。
その他、症例はメールにてお知らせできます~メールを送る
鍼灸で皮膚の状態を改善して、快適に過ごしましょう。
【鍼灸での体質分類など、この説明は患者さん向けです。臨床では外邪・内生病邪など含め、多角的に病因病理を考え弁証論治します】