■鍼灸の体質分類
鍼灸は、中国で『黄帝内経(こうていだいけい)』という書物として2000年前にはすでに体系化され実践されていました。
『黄帝内経』に記載される鍼灸の特徴は、体質という考え方を持っている事です。
鍼灸では病気の原因を外因(気象・気候変化や西洋での細菌・ウイルスなど)と内因(主に精神情緒の変動)にわけています。
身体に弱りや偏りがあると外因(寒暖差、暑さ、寒さ、高湿度、乾燥、ウイルス・細菌など)が影響したり、容易に入り込んで風邪や発熱性疾患を発病したり、内因であるストレスに弱くなり、精神不安定、肩こり、疲労倦怠感などが起こってきます。
身体の弱りや偏りとは、体質のことです。
鍼灸では、体質を以下の ように分類しています。
大きく分類すると、実証(じっしょう)・虚証(きょしょう)と熱証・寒証になります。
実証・虚証とは
実証は、体力が充実して強い状態です。外因では発病しにくいですが、内因で精神ストレスが多いと血圧があがったり、興奮して怒りやすくなったり、不眠になります。
虚証は、体力が低下した状態です。外因である冷たい風にあたって風邪をひいたり、梅雨に湿気で倦怠感、下痢などを生じやすくなります。また少し仕事をすると疲れてしまうような体質が相当します。
熱証・寒証とは
熱証は、暑がりで身体が炎症傾向の状態です。舌色は平均より赤く、体温も高めです。健康な人も多いですが、湿疹・吹き出もの・歯周病・糖尿病などに罹りやすい体質です。
寒証は、寒がりで身体の機能が低下傾向の状態です。舌色は平均より白っぽく、体温は低めです。風邪を引きやすく、体力もあまりありません。
体質の組み合わせ
①と②の体質はペアになります。多いのは
実熱証(熱証と熱証が同時にある)、
虚寒証(虚証と寒証が同時にある)
虚熱証(虚証と熱証が同時にある)です。
実熱証は、体力があり炎症傾向。
虚寒証は、体力がなく、機能が沈滞傾向。
虚熱証は、体力が低下しているのに熱症状があるものです。慢性病が進んだ状態で現れます。
現代人は上実下虚が多い
現代日本は仕事のストレス、社会情勢の不安など多くの緊張に晒されています。そのため上半身が緊張し、運動不足で下半身が弱っている人が多くなっています。
これも体質の一つで、上の分類と合わさって、頭痛・めまい・不眠・腰痛・各種アレルギー疾患、更年期障害などを生じやすい体質になっています。また自律神経失調症はほとんどが上実下虚の体質となっています。
■体質改善の効果
鍼灸で偏った体質を改善すると、症状が軽快したり病気に罹りにくくなります。例えば、熱証の体質を改善すると、吹き出物が出なくなったり、血圧が下がってきたり、よく眠れるようになります。
虚証の体質をよくすると、朝起きがよくなり、疲れにくく、風邪をひかなくなってきます。
このように身体のベースである体質をよくすることは「治未病」(未だ病まざるを治す)といって、予防に通じていきます。
■体質改善の鍼灸
体質ごとに鍼灸の内容が異なります。
実証は少し強めの刺激をし、虚証はごく軽い鍼刺激やお灸が適しています。
寒証は鍼と合わせてお灸が適しています。
熱証は鍼が適しています。
上実下虚のタイプは上半身の緊張を緩め下半身の弱りを補います。
橋本鍼灸院では、主訴と合わせて体質も同時に対処する鍼灸をしています。主訴が落ち着いても、体質の偏りは残っていることが多いので、2週間に1度程度、鍼を継続して受けるのがいいですね。