中府(ちゅうふ)LU1
【出典】『鍼灸甲乙経』(以下,『甲乙』)
【要穴】肺の募穴
【交会等】
【部位】前胸部,第1肋間と同じ高さ,鎖骨下窩の外側,前正中線の外方6寸.
※雲門の下方1寸.
【中医穴性】調理肺気(気類)《鍼灸精粹》.宣肺止咳,降気寛胸《腧穴学》.
【中医主治】気管支炎、哮喘等。肺・気管支疾患で圧痛。
【古典主治】
■『素問』水熱穴論篇第六十一・王冰註
大杼膺兪缺盆背兪.此八者.以瀉胸中之熱也.(膺兪者.膺中之兪也.正名中府.)
■『鍼灸甲乙経』
⬤巻 三 / 諸穴 / 胸自雲門侠気戸両傍各二寸下行至食竇凡十二穴第十七
中府、肺之募也、一名膺中兪、在雲門下一寸、乳上三肋間陥者中、動脈応手、仰而取之、手太陰之会。刺入三分、留五呼、灸五壮。
⬤巻 八 / 五藏伝病発寒熱第一(下)
肺系急、胸中痛、悪寒、胸満悒悒然、善嘔胆、胸中熱、喘逆気、気相追逐、多濁唾不得息、肩背風汗出、面腹腫、膈中食噎不下食、喉痺、肩息肺脹、皮膚骨痛、寒熱、煩満、中府主之。
■『小品方』巻第十二 / 灸法要穴
💠『医心方』所引の『小品方』逸文。以下同。💠
灸咳嗽法。。。又方、灸中府穴五十壮、肺募也、在雲門下一寸。
■『太素』
⬤巻第十一·輸穴 / 気穴
大杼、膺輸、缺盆、背輸、此八者、以瀉胸中之熱。
⬤巻第三十·雑病 / 気逆満
気逆上、刺膺中陷者与下胸動脈。(胸下動脈、中府等量取也。)
⬤巻第三十·雑病 / 厥逆
厥逆腹満脹腸鳴、胸満不得息、取之下胸二肋咳而動手者、与背輸以指按之立快者是也。(厥逆胸満不得息、可量取下胸二肋咳而動手之処、謂手太陰中府輸也。。。)
■『明堂経類成』
主肺系急咳、胸中痛、悪清、胸中満色色然、善嘔食、胸中熱、喘逆、逆気相追逐、多濁唾不得息、肩背風汗出面、腹腫、鬲中不下食、喉痹、肩息肺脹、皮膚骨痛、寒熱、煩満。※「悪清」:『鍼灸甲乙経』悪寒。
■『備急千金要方』
⬤巻十七 肺藏方 / 積気第五 / 灸法
奔豚上下腹中与腰相引痛、灸中府百壮、穴在乳上三肋間。
⬤巻二十 膀胱腑方 / 霍乱第六 / 灸法
転筋在両臂及胸中者、灸手掌白肉際七壮、灸膻中、中府、巨闕、胃脘、尺沢、併治筋拘頭及足皆愈。
⬤巻二十八 脈法 / 三関主対法第六
寸口脈細、発熱嘔吐、宜服黄芩龍胆湯。吐不止、宜服橘皮桔梗湯、灸中府。
⬤巻三十 針灸下 / 頭面第一 / 喉痹
中府 陽交 主喉痹、胸満塞、寒熱。
⬤巻三十 針灸下 / 心腹第二 / 胸脇
曲池 人迎 神道 章門 中府 臨泣 天池 璇璣 府兪 主胸中満。。。雲門 中府 隠白 期門 肺兪 魂門 大陵 主胸中痛。
⬤巻三十 針灸下 / 心腹第二 / 大小便病
関元 中府 神門 主遺尿。(《甲乙》云:中府一作委中。)
⬤巻三十 針灸下 / 心腹第二 / 水腫
中府 間使 合谷 主面、腹腫。 陰交 石門 主水脹水気行皮中、小腹皮敦敦然、小便黄、気満。
⬤巻三十 針灸下 / 心腹第二 / 不能食病
中庭 中府 主膈寒、食不下、嘔吐還出。
⬤巻三十 針灸下 / 心腹第二 / 嘔吐病
中庭 中府 主嘔逆吐、食下還出。
⬤巻三十 針灸下 / 心腹第二 / 咳逆上気
魄户 中府 主肺寒熱、呼吸不得臥、咳逆上気、嘔沫喘気相追逐。 。。
庫房 中府 周栄 尺沢 主咳逆上気、呼吸多唾濁沫、膿血。
⬤巻三十 針灸下 / 風痹第四 / 飛尸遁注
九曲中府、在旁廷注市下三寸、刺入五分、灸三十壮。主悪風邪気遁尸、内有瘀血。
⬤巻三十 針灸下 / 熱病第五 / 熱病
五处 攅竹 正营 上管 缺盆 中府 主汗出寒熱。。。
膈兪 中府 主寒熱、皮肉骨痛、少気不得臥、支満。
■『千金翼方』
⬤巻第二十七·針灸中 / 肝病第一
身体煩熱、針中府。又、灸絶骨五十壮。
⬤巻第二十七·針灸中 / 胃病第六
治卒噦、灸膻中、中府、胃管各数十壮、灸尺沢、巨闕各七壮。
⬤巻第二十七·針灸中 / 肺病第七
中府二穴、主奔豚上下、腹中与腰相引痛、灸百壮。
⬤巻第二十七·針灸中 / 膀胱病第十
転筋在両臂及胸中、灸手掌白肉際七壮。又、灸膻中、中府、巨闕、胃管、尺沢。
■『外台秘要』
⬤巻第三十九 孔穴主対法/脾人脾者藏也両傍四十八穴
中府:肺募也一名膺中兪在雲門下一寸一云一寸六分乳上三肋間動脈応手陥者中足太陰之会灸五壮主肺系急胸中痛悪清胸満邑邑然嘔胆胸中熱喘逆気気相追逐多濁唾不得息肩背風汗出面腹腫膈中食噎不下食喉痺肩息肺脹皮膚骨痛寒熱煩満
⬤巻第六 霍乱雑灸法二十六首
又療転筋在両脇及胸中法。灸手掌白肉際七壮、又灸膻中中府巨闕胃管尺沢以上、併療筋拘頭足攣急皆愈。
■『医心方』
⬤巻 第 二 / 孔穴主治法第一
中府二穴:肺募也。一名膺中輸。在雲門下一寸、乳上三肋間動脈応手陥者中。刺入三分、留五呼、灸五壮。(同上、又手太陰肺。)主咳、胸中痛、悪凊、多唾、肩背風汗出、面腹腫、喉痺、肩息肺脹、皮膚骨痛。
⬤巻 第 九 / 治咳嗽方第一
灸中府穴五十壮、肺募也、在雲門下一寸。
⬤巻第十一 / 治霍乱転筋方第十
《千金方》霍乱転筋方:。。。又云:転筋在両臂及胸中方:灸手掌白肉際七壮。又灸膻中、中府、巨闕、胃脘、尺沢、併治筋拘頭足、皆癒。
■『太平聖恵方』巻第一百
中府二穴。在雲門下一寸六分。乳上三肋間。動脈応手。灸五壮。主肺急。胸中満。喘逆。唾濁。善噎。皮膚痛。
■『銅人腧穴鍼灸図経』
中府二穴、肺之募、一名膺中腧。在雲門下一寸、乳上三肋間動脈応、手、足太陰之会。治肺系急、胸中痛悚悚、胆熱、嘔逆上気、咳唾濁涕、肩背痛、風汗出、腹脹食不下、喉痹肩息、膚骨痛寒熱。針入三分、留五呼、可灸五壮。
■『鍼灸聚英』
🟢『鍼灸抜粋』の経穴部分の原文。
「肺之募。足太陰脾脈之会。銅人鍼三分留五呼、灸五壮。〇主腹脹、四肢腫、食不下、喘気胸満、肩背痛、嘔啘、欬逆上気、肺系急、肺寒熱、胸悚悚、胆熱嘔逆、欬唾濁涕、風汗出、皮痛面腫、少気不得臥、傷寒、胸中熱、飛尸遁疰、癭瘤。」
--------江戸期経穴書---------
■『鍼灸抜萃』
「銅人に針するに針三分、留むること五呼、灸すること五壮。腹脹り、四肢腫れ、食下らず、喘気。胸つかえ、肩せなかいたみ、嘔啘(からえずき)、欬逆、上気、肺系ひきつり、肺の寒熱、胸悚悚(ショウショウ)たり胆熱、欬唾、濁涕、風汗出で、皮痛、おもてうきばれ、少気臥することを得ず、傷寒、胸中熱し、飛戸、遁疰、癭瘤を主る。」※啘(えつ):むかむかする。※悚悚:症状の激しいさま。※癭瘤(えいりゅう):癭は頸部の腫瘤。甲状腺腫・リンパ節腫など。※おもてうきばれ:面浮腫。
■『鍼灸抜粋大成』
「銅人に鍼三分留ること五呼、灸五壮。 〇病治 腹脹、四肢腫れ、胸中煩痛を主る。」
■『鍼灸重宝記』
「灸五壮、針三分、腹脹、手足はれ、食下らず、喘気、胸痞、肩背いたみ、嘔啘咳逆、上気、肺系ひきつり、肺の寒熱、胸ふるひ、胆熱し、欬唾、濁涕、風、汗出、面は浮れ、少気して、臥すことならず、傷寒、胸中熱し、遁死をつかさどる。」
■『鍼灸則』
「胸肋痰痛、中風。」
■『鍼灸説約』
「針三分、灸五壮。喉痺、胸中煩満、肩痛挙げることを得ざるを治す。」
※喉痺:のどの炎症による痛み、閉塞感を呈する症状。
■『霊枢』:明・無名氏本。日本経絡学会影印本(1992年)
■『難経』:『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)
■『傷寒論』:明・趙開美本 燎原書店影印本(1988年)
以上は、小林健二氏作成テキスト。
■『脈経』:東洋医学善本叢書7影宋版.1981
■『鍼灸甲乙経』:『針灸甲乙経-中医古籍名家点評叢書』.黄龍祥点評.中国医葯科技.2018。
:東洋医学善本叢書7『古鈔本鍼灸甲乙経』.1981
■『肘後備急方』:『葛仙翁肘後備急方』明万暦2年.内閣文庫蔵.紅葉山文庫旧蔵本
■『小品方』:『医心方』所引の『小品方』逸文。
■『黄帝内経太素』:『黄帝内経太素』科学技術文献出版.2005。
:東洋医学善本叢鈔書3.1981
■『明堂経類成』一巻:東洋医学善本叢書3.1981
■『備急千金要方』:『備急千金要方 千金翼方』山西科学技術.2010。
:国立民族学博物館所蔵『宋版備急千金要方』.国指定重要文化財.
■『千金翼方』:同上。
■『外台秘要』:東洋医学善本叢書 宋代影印本.1981
:『外台秘要 40巻』京都大学.富士川文庫本.写 和大.
■『医心方』:京都大学貴重書アーカイブ・安政元年多紀元堅閲元昕の序及び万延元年多紀元佶の跋。『医心方校釈』丹波康頼編撰.学苑出版社.2001。
■『太平聖恵方』:多紀元悳・元簡手校本.内閣文庫所蔵.写本 .江戸.
■『銅人腧穴鍼灸図経』:『《新刊补注銅人腧穴針灸图经》校注』.河南科学技术出版社.2015。
:『銅人腧穴鍼灸圖経』宮内庁書陵部.多紀本.明版.