(4)季節の病因

季節と五気

季節の影響は、古代思想の五行説の影響を受けて、五つに分けて考えます(五気といいいますが、上の六気と紛らわしいですね)。春は風木、夏は暑火、雨季は湿土、秋は燥金、冬は寒水と表現します。それぞれ東洋医学の五蔵に対応して、影響すると考えます。これら季節の影響による症状は発熱は伴いません。例えば、春に風木の気候の影響を受けて肝の働きが盛んになり、健康ならやる気がでて活発に活動するようになります。しかしストレスが多い人では、緊張状態が過度になり、不眠やイライラ、耳鳴りなどの症状が春は出やすくなります。このように季節が身体に大きく影響していることが2000年前から認識されていました。

気象=六淫(風、寒、暑、湿、燥、火)

季節=五気(風木、暑火、湿土、燥金、寒水)

と表現できます。

蔵気法時説(ぞうきほうじせつ)

蔵気法時説とは、五藏の病がどの季節・時刻に,発病し,悪化し,持続し,好転するのかを,五行の相生相剋関係を根拠に述べている病因説です。『黄帝内経』の『素問』蔵気法時論というところに書かれています。

例えば、春になって気温が上昇してくると、身体では五蔵の内、肝の働きが盛んになってきて、健康であれば、やる気がでてきて活動的になってきます。身体の五蔵や陰陽のバランスが悪いと、春に肝が盛んになりすぎて、のぼせ、イライラしたり、不眠、鼻血、興奮状態などの症状がおこってきます。更に胃腸が弱い人は肝の影響を受けて腹痛や下痢、倦怠感の症状を起こすことがあります。
このような季節の影響による五蔵の変動を説明したものが蔵気法時説です。

下の一覧表は、季節による五蔵への影響と臨床的に起こりやすい症状を示したものです。

蔵気法時の一覧表

鍼灸では、例えば春は盛んになりすぎた肝を鎮めるために肝に関わる経穴(ツボ)に鍼をします。胃腸の弱い人(脾虚といいます)は肝をさわると悪化するので、胃腸の働きを強めるツボに鍼や灸をします。春に肝が盛んなことで胃腸の症状が出ることを、木乗土(または木克土)といって五行説の相剋関係による病理を示しています(各季節ごとに相剋による病理が生じると考えます~後日解説予定)。このように季節が身体に与える影響を考えて適切な処置を行うことが鍼灸や漢方でも大事です。

蔵気法時は一年の季節に関するものと、一日を一年として時刻を季節に配当する内容も記載されています。春は日の出、夏は正午前後、雨季は未の刻(14時頃)、秋は日没、冬は夜12時に相当するとしています。季節と同じように五蔵の盛衰が生じるとされています。以下の図は、季節と一日の蔵気法時を解りやすいように図式化したものです。

一年の蔵気法時の模式図

一日の蔵気法時図の模式図

【続く】